肥満の先に待つものは

糖質制限について、なぜ継続させようとしているのか。それは、単に現在の糖尿病治療の問題点を追求するためではない。

メタボと糖尿病について調べていくうちに、この二つの病気がいかに将来、自分の身体に悪い影響を与えるかが分かってきたからだ。

特に影響を与えるのが、脳である。

これから急激な増加が見込まれる認知症は、実は40代から始まることが分かってきた。そして、20~30年かけてジワジワと進行していく。

記憶力が低下したり、新しいことが苦手になったり、うっかりもの忘れをしたりすることは、老化と共に誰にでも起こることだが、アルツハイマー型認知性というのは、すぐ前に起こったことの記憶がスッポリと抜け落ちる。いわゆる「病的もの忘れ」の症状が起きる脳の病気である。

この原因とされるのが、実は、糖尿病や肥満であることが分ってきた。

そのメカニズムを説明しておこう。

メタボになって、内臓脂肪がお腹に蓄積されていくと、脂肪細胞が炎症を引き起し、糖質を摂った際、血糖値を下げるために膵臓から分泌されるインスリンホルモンの効きが悪くなる。

そのため、膵臓は更に頑張ってインスリンを分泌し続け、ついにはダウンして、インスリンホルモンが出なくなってしまう。

これが糖尿病を悪化させた時の症状で、その結果、糖尿病患者は、食事のたびに外からインスリン注射をせざるを得なくなる。

つまり、インスリンの効きが悪くなるよう蓄積された脂肪細胞が抵抗するので、この症状を「インスリン抵抗性」と呼んでいる。

ところが、最近の研究では、このインスリン抵抗性が長く続くと身体のあらゆる臓器系や神経系に影響を及ぼすことが分ってきた。

特に、神経は、血液中の糖分とインスリン濃度の上昇に非常に敏感となり、インスリン抵抗性が慢性的になると、神経を傷つけて、足先のしびれなど、いわゆる糖尿病障害と呼ばれる状態を引き起すのだ。

更に、インスリン抵抗性が高い状態が長く続くと、血糖値を下げるために血液中にどんどんインスリンが分泌され、高インスリン血症と呼ばれる状態になる。これを分解するのが、インスリン分解酵素である。

実はインスリン分解酵素には、もうひとつ大切な働きがある。

それは、加齢の結果、脳細胞にたまっていくアミロイドβというタンパク質を分解して除去する働きだ。

ところが、インスリン抵抗性が高くて、血液中が高インスリン血症、すなわちインスリンでいっぱいになると、その分解で手一杯になり、副業となる脳内のアミロイドβタンパク質の分解にまで手が回らなくなる。

その結果、脳内にアミロイドβタンパク質が大量に蓄積されて、やがて神経繊維にグルグル巻きに絡みついて、毒性を発する。その結果、絡みついた部分から神経細胞か死滅してしまって、アルツハイマー病を発症するのだ。